三島の民話 龍神様の門松

龍神様の門松

昔あったどぉ

山奥の川っぷちに、年中貧乏な男いでやったどぉ。子供ど母様三人でやっと食べでらったど。雪が二間も積もっから、なお容易でなかったど。

さで、正月近くなって正月用意しっかど思っても金がねぇ、子供さも母様さもなっても買ってくれるよねぇ。門松ぐれぇはでっかい皆たまげるようながな、迎えでくっかんな、って裏山さ行ったど。あっつこっつ探して、いぎま良い門松めっけで、やっとごすっとご雪の上引っぱって来たど。

「今来たぞぉ。今まで見だごどねぇほど、でっかい門松迎えできたぞ」ったぁ

「なんだどまぁ~こんなでがいがな、どごさ立でんだど。人出入り出来めぇ」

「いやいや 年徳様にこれで勘弁してもらぁだ」

「いやいや 村の笑い者だべ。下の大渕さ捨てできらっしぇ」母様におごらっちぇ枝二、三本切って、やっとの思いで大渕の崖さひっぱってって

「龍神様~、これ おれの正月のお祝いだがら、受けてくなんしょ~」ジャポーン

とおんまぐったど。とごろが 門松はグルグルグルグル渦巻きみでぇに巻いで、せがスーーッと沈んでいったど。

「ああ~龍神様受げどってくれやった。よがった よがった」戻り足になったら

「ちょっと まっちぇくんつぇ。おれは龍神様の使いで来ました」こめらが手招きしてんだど「おや おれが門松、あんまでっかくて龍神様怒ったのが」

「いや~それどごんねぇ。龍神様大喜びで、心良いがらせで来ぉ、そう言わんの」

「そんじぇも川ん中さ入るに、大変だなぁ」

「さすけね さすけね、目隠しして俺さくっついで来てくんつぇ」

どごどごどごどご行ったら、いやぁ~すばらすぃお屋敷で、ごっつぉはすごいべ大した御馳走になって、龍神様に喜ばっちゃど

「竜宮城始まっての良い門松だったぞ。誠にありがだがったぞ。お前ぇにお礼をしたいぞ。何が良いかな?無ぇ物なんて無ぇだ」

「んじゃって俺ぁ、かがぁに怒らっちぇ捨てたがんだも・・・」

「いいがらいいがら。そんじゃらこっちがらあげるよ」ちゅわっちぇ、大した箱さ入ったの幾箱も貰って、子供に送らっちぇ家さ着いただど。

「かがぁ今来たぞぉ。とでも大したどごさ行って来た」

「あんな門松一本おんまぐってくんのに、いづまでかがってんの」怒りながら、出てきた母様、たまげっちまったど。

「やんだやんだ こうだに、宝物んねぇのがよ」ったべぇ

「そうやれ龍神様がらもらってきただぞ。どの箱さもいっぺぇ入ってんぞ」

お金やら、金、銀、珊瑚、それごそ綾錦、宝物がいっぱいだじゅ。みんなぶったまげでしまったどぉ。それでまぁ、大変にその家さ栄だ。

龍神様の門松のお祝いの話。

ざっと昔 栄ました

元話 故片山長平さん(桧原)

再話 五十嵐七重さん(西方)