虫供養


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 集落の上手にある墓地を抜けると、石碑が建っている。以前は木彫りの塔、それより前は傍らの桜の古木を供養塔に見立て、根元に設えられた祭壇に供物を捧げ参拝していた。

 毎年11月10日(かつては旧暦の10月10日)、早戸地区では「虫供養」が行われている。地区の人々は「塔婆立て」と呼んでいる。鉦を叩きながら先頭を行く人のあとを、庭の小菊や供物を携えた村人たちが三々五々ゆるやかな坂道をのぼってゆく。供養塔に辿り着くと、御札を捧げ、線香を焚き、花や果物、菓子などを供え、祭壇の前で手を合わせる。参拝の後、供物が御護符として配られる。

 昔、この場所から山を下る「六月坂」と呼ばれる道があり、子供たちが歩いて学校へ通っていた。虫供養の日は子供たちが学校から帰ってくるのを山道の上で出迎え、一緒に参拝した。おなかをすかせた子供たちのために、大鍋いっぱいの大根煮やかぼちゃ煮、団子などが用意されており、子供たちもこの日を楽しみにしていたという。六月坂は、明治13年まで隣の滝原地区との往来に利用されていた。

 かつて六月坂の降り口には道祖神が立っていたという。昭和40年の調査ではすでに消滅していることが確認されており、ある本によれば明治以前の建立と記録されている。道祖神の姿は性器(性別は不明)をかたどった石像か自然石で、いつしか倒れ山から落ちたものという。

<奥会津書房『三島町散歩』より>