三島の民話 山寺の怪

山寺の怪

昔、あったどなぁ。

ある時、一人の旅の坊さまがこの村さ来らったど。村前ずっと歩いていったら、おふれが出てだど。なになに、寄ってみたらば、

「この寺には化け物が出て困っておる。この化け物を退治してくれたものには、この寺の坊さまになってもらいたし」

旅の坊さま、ゆっくり読んでらったっけぇが、

「どれ、そんなことか。わしが行ってみるか…」なんて寺さのぼっていがったど。道々村の人たちさこんなこと喋っていったど。

「私が寺さ泊まってみよう。散財かけるがのう、薪と酒を用意してもらいたい」

村の人たちは薪運び、酒も用意したど。坊さまはどんどん火たいて酒飲んでいたらば、まことに美しい音色がしただど。

「あぁ、これは蜘蛛の化け物でもあんめぇな」ちゅったら、その音色は止まったど。

「ケタケタケタケタ~」したっけ今度は笑うふうな声がしただど。

「おぉ、おめぇは下駄の化け物だべわぁ」ちゅったら、その化け物消えたど。したらば今度は、

「カサカサカサカサ~」ちゅった。

「あぁ、おめぇは傘の化け物だべわぁ」ちゅったら、その音が聞こえなくなったど。そうこうしているうちに夜が明けたがら、ゴォ~ン、ゴォ~ンと鐘ついたど。

「やれ坊さま、無事だったなぁ」どって村の人たち集まってきたど。

「坊さま坊さま、無事だったなぁし。良かったが変わったことあったがよ」

「あったあった。変ながないっぺぇ

出たぞ。そこらじゅう捜してみろまぁ」ちゅわっちぇ古寺ん中、村の人たち捜したど。

二階のほうには古いでっかい蜘蛛がいだど。縁の下さは古い下駄ぼっこれいっぱいあったど。庫裏の入口の陰のほうさは、ぼっこっちゃ傘あったど。これら村の人たちよ~ぐ納めたら毎晩出てた化け物出なくなって、その坊さま寺さ住んでもらって、良い寺になんべぇし何ほど良かったど。

ざっと昔、さげた。

 掲載協力者 故小松イセさん(西方)