三島の民話 姥捨て山

姥捨て山

むかしあるどごろに、姥捨て山つぅ山あったどぉ。とごろの殿様が、年寄りは汚くてみぐせぇ、山サ捨てろつぅわ
げよ。みな泣ぐ泣ぐ山サ置いできた時代だぁ。

その村の若ぇ者、ばあ様背負ってたが切なくてなぁ、泣き泣き行ったぁべ、ばあ様は背中でポキポキ枝おだってっ
たぁだど。
「ばあ、俺、俺、帰っからな~。お別れだー」
「ああー行げ、おれ木の枝おだりながら来たがぁ、迷わねぇで行げ」
息子は、親んどご考えっと切なくてよ~切なくてぇ、山サ行った。
「俺ぁ、誰が何つったたって婆のごどせでぐ」ったど、
「そんなごどしっとお前ぇ、殿様がらひでぇ罰あだんぞ。俺なのかまぁねぇで家サ帰れ。なっ、帰れ」
「やんだ!おらそだごど出来ねっ」
家サせで来て、芋種穴サかぐまっただど。誰が何つったたって、何年もかぐまっていただと。

そうこうしている内に、殿様、村サ来て、
「灰汁で縄なってみろ!」無理難題申し付けてただど。村には知恵ある年寄りはいねぇがら、応えるごどでぎね
べぇ・・芋穴のばあ様サ聞いてみだど。したらば、
「おおーそれはな、縄をコリコリなって、きづーい塩水サ一晩つけろ。それずだらがして乾いだがな炭火の上で焼げ」
つったべ。その通りにしたら、立派な灰縄でぎだど。殿様に褒めらっちぇ、ご褒美もらっただど。

そしたら、殿様、また問題申し付けただど。
「一本の木、元もうらも真ん中計って同じ太さの木を持って来い」
やれやれ、村の達ぇ困ったげんじょ、誰っちぇもわがんねぇ。息子がまた、ばあ様サ聞いだら、「木のうらんどご、いっかも水サ漬けでおげ。水が染んで、良い案配ぇんどぎ、真ん中計ってみろ」言わっちぇやったら、元もうらも無ぇよながな出来だど。殿様サ持ってったら、「良ぐ出来たなぁ。考えだもんだ」ほめらっちぇ褒美もらったど。

「年寄りの知恵はたいしたもんだなぁ」つくづく親に感謝してだある晩、お月様みながら、「親のおかげだ。年寄りはありがでぇのに、捨てろなんて・・」考えでだら親捨て山の方がら、火の玉スーーッつど目の前ぇサ飛んできて、女の人出てきただど。
「私は月姫でやす。すなだの親孝行は天から見でいやした。そんじぇなんでかんで嫁にしてもらいでぇ、と参りやした」つった。
「とんでもねぇ、しなだのような・・お月姫様なの・・」
「わたしは、すなだのおがだになりたいの」つってきかねだど。
そんじぇ夫婦になってだら、あっ時な、玉手箱持って来て、
「これは私の命、すなだに預ける。一番困った時開けで下さい」なんつっただどぉ。

それがらある時、国中で合戦おっぱじまって、おら方の殿様敵に囲まれっつまった。年寄り全部山サ捨てっつまったがら人が居ねぇ苦戦続きだもの~
「誰んじぇもいい、人集めろぉ!」つってもさっぱり集まんねぇ。

そんじょぎだど~月姫が、
「すなだ、玉手箱開げでみらんしょ。大事なもの出るよ」つったがら開げだぁ。いやぁ出る出る!百姓やら侍やら山サやらっちぁ人だれもゾロゾロゾロゾロ出てきて、合戦に勝っただど。
「おれが悪がったぁ、かんべんしてくろ!」殿様は村の達ぇサあやまってなぁ。はぁ、年寄り捨てるつうごどなぐなったどぉ。

ほんじぇ ざっと 昔栄た

元話 五十嵐 ミヨノさん (西方)
再話 五十嵐 七重さん(西方)