三島の民話 猿婿の話

猿婿の話

昔、あるところに爺さんと婆さんに娘三人が暮らしておったど。ある時、爺さんが田の水とりに堰さ行ったら、大石が堰の真ん中に落ちてで、とても動かせず困っておったら、上の方から猿が来て、「爺さん、俺がとってやるから」と、すぐにとってくれた。喜んだ爺さんは「ありがとう。何か褒美をやるから何がいい」と言ったら、猿は「爺さんには娘が三人いるから、一人でいいから俺にくれ」。爺さんは「いいとも」と約束してしまって、「これは困ったことを言ってしまった」と帰り、心配のあまりご飯も食べずに寝ておったら、一番先の娘が「爺さん、起きて湯でも茶でも飲んで寝たら」と言う。爺さんは「ほかでもないが俺の言うことを聞いてくろ。実はこういう訳で猿に娘を一人やることにしてきたので、お前行ってくれないか」と言ったら、娘は「嫌だ。猿のお方になんか行ってやるもんか」とさっさと出て行ってしまったど。その次の娘が来て「爺さん、起きて湯でも茶でも飲んで寝たら」と言う。爺さんは「猿のお方に、お前行ってくれないか」と言うと、その次の娘も「ううやだ。猿のお方になんか行ってやるもんか」と言う。三番目の娘が来て「爺さん、起きて湯でも茶でも飲んで寝たら」と言う。また爺さんは「猿のお方に、お前行ってくれないか」と言うと三番娘は「いいとも。俺が行くから、起きて湯でも茶でも飲んで寝な」と言ったので爺さんは喜んだど。猿がもらいに来たので、爺さんは泣き泣き送って行ったそうだ。

それから娘は、三月の節句に餅をついて爺さんの所に礼に来るわけだ。猿は重箱に餅を入れようとすると、娘は「家の爺さんは重箱臭くて嫌だと言うから」と言うと、猿は臼ごと背負って行くことになり、途中まで来たら橋のそばにきれいな桜の木があり、きれいに咲いておったので娘は「爺さんにあのきれいな花を持っていってやりたい」と言ったら猿は「どれとってやるから」と臼を土の上に降ろそうとした。娘はすかさず「家の爺さんは土臭いのは嫌がる」と言うと「そうかぁ」と言って臼まで背負って木さ上がって「これがいいか」と言う。「一番上のきれいなのがいい」と言ったので、猿は取ろうとして上に登った。重い臼だったから枝が折れて、猿はそのまま川に落ちたど。そのとき猿は、

猿沢に 落ちる命は惜しくない

後でお姫が泣くっちゃべーと言ったそうだ。

ざっと昔、さかえもうしたと。

掲載協力者 二瓶アツ子さん(大谷)