三島の民話 早戸温泉鶴の湯の話

早戸温泉鶴の湯の話

今から 一千八百年もの昔の事だ。

只見川大渓谷は住む人もまれな秘境であった。この早戸に住むひとりの百姓が、只見川の川端さ降りてったじゅうなぁ。

ガサガサガサガサ草かきわけてボゴボゴの岩場の足元、気ぃつけながら魚とりさ行ったわげよ。釣り糸たれで浮がピコピコ動くの確かめっと「ハイッとしょ」掛け声なんぞかけてなぁ、一匹また一匹とやらがしてたじゅうなぁ。

そん時よ、川端の一番でっかい大岩のかげで「ククックルクルクッ」玉ころがすよりもまっとまっと穏やかな音がしたじゅう。百姓はフッと静かに腰あげてなぁ・・ゆっくらゆっくら音のしる大岩さ抱ぎづぐようにしてソ~~ッと陰見たどぉ。「ア~アッ」いやはや一羽の鶴が岩陰の湯けむりの中で、脚を湯にひたしていたじゅうだぁ。息のみこんだまま百姓あだり見たど。岩陰には湯がコンコン湧き出てで、鶴の脚がたっぷらど浸される位ぇの湯がたまってだどぉ。

じ~っと百姓はその鶴見でだ、したらば鶴はゆっくら脚のばしたり、縮めたり羽ばたいたりしてまた湯に脚入れだり出したりしてだが、両脚そろえて石の上さ立つと胸張って羽ばたいてサ~~ッと飛んでったじゅうなぁ。

百姓は我もためしに入ってみだらば、いや~~身体の疲れがス~~ッとぬけちまったどぉ。大喜びして帰った百姓は、村の人達さしゃべってなぁ、いやはや村の若ぇ衆で湯の浴槽を深く広く掘ってみんなして入れるようにしただどぉ。そうしたら、傷も治るし足腰痛ぇのもやわらいで大喜びやれ。じい様ばあ様、ケガしたこめら達ぇ、仕事して戻っとぎにへぇったりしてなぁ、療養保養の場にしただどぉ。そのうちにこの湯の効き目はたちまち広まり、湯へぇりさ来る人がたいそう増えたんだわい。

世の人助けのためどして、泊まられるようにしてなぁ湯の名前も「鶴の湯」どつけたんだどぉ。

その湯はこの平成の世になってもコンコンと湧いでありがたい宝の湯として早戸にあんだぞぉ。傷にはとにかぐ効ぐなぁ。

 

鶴の湯温泉の由来話

おしまい

元話 故佐久間衛雄さん(早戸)

再話 五十嵐七重さん(西方)