三島の民話 布地蔵

布地蔵

むがし あったどぉ

じい様どばあ様が やったどぉ

いっつも いっつも じい様は山さ木切りさ行ぐだどぉ

ばあ様は いっつも いっつも 機織りしったどぉ

 さで 春木切りの頃だ。冬じゅう機織ってだ ばあ様

「じい様 じい様。これ 三年みつきど二十九日かがって こしゃった布だ。

たっぷりど一反あっから 売ってきてくんつぇ」

「なんだどまぁ、にしても 根気の良いやつだなぁ。有り難ぇ 有り難ぇ。早速町さ行ってこべぇ」

 つうど 町さ出掛けだどぉ。村下まで来たらば 地蔵様おらってなぁ、今朝がらの春雪かぶって もぞぉせぇなぁど 思ったっけど。

「 ののや~~のの(布) ののや〜〜のの(布) 」

じい様 ずな〜い声で じなっても、なんぼう歩いでも歩いでも ねっか 布は売れねぇだどぉ。

「 ののや~~のの(布) ののや~~のの(布) 」

しもかみ歩っても 売んにぇ

「なんとも しょうねぇなぁ、ばあ様もがっかりしんべなぁ」

晩方にはなんべぇし寒くはなんべぇし、帰るほがねぇど思ってばあ様の事思ったらば、地蔵様んどごも思っつけだど

「んだ んだ、地蔵様だ。買い手がねぇだがら・・・」

つうど、じい様 ドンドン村さもどって来ゃったど。

「地蔵様 地蔵様、のの(布)売んにゃがった。地蔵様ぁ どうが受げどってくんつぇまぁだ雪も降る。雨も降る」

つうど 地蔵様さのの 巻いてくっちゃどぉ。せぇがらトットコ家さ来たどぉ。

「ばぁさん ばぁさん、のの(布)は売んにぇがったがら、地蔵様に着せで来たぞ」

つったら ばあ様も、大喜んびしゃってなぁ

「それは 良いごどしゃったわぁ。なんぼう喜んびゃったべぇわ」

つっど、地蔵様のごど 語りかだり 寝やったそうだ。

したらば 今度ぁ夜中んなって にぎやかな声に目ぇさめだどぉ

  のの(布)~爺は どごだんべぇ~

  のの(布)~婆は どごだんべぇ~

  のの(布)~爺は どごだんべぇ~

  のの(布)~婆は どごだんべぇ~

夜中だもの、じい様どばあ様は ふとん つっかぶって朝んなったどぉ

そんじぇ そろらそろら庭さ出だら 家前ぇにピッカピッカのカネがえっぺぇ えっぺぇ あっただどぉ。

  のの(布)~爺 ザックラショ

  のの(布)~婆 ザックラショ

ざっと むかしがさかえた ど

元話 故小柴モトさん(西方)

再話 五十嵐七重さん(西方)